こんにちは、消化器内科医のコツコツDr.Gです。
今回は、消化器病学会専門医試験の「食道」領域を無料公開します。
試験対策全体の概要はこちら:【2026年】消化器病専門医試験対策|忙しい医師のための勉強法
日本消化器病学会専門医試験(第9集・第10集)をお手元に用意して、問題の解説として利用していただくと良いかと思います。
本書は、日本消化器病学会専門医試験(第9集・第10集)の出題パターン、公式の解答・解説、および関連する最新ガイドラインを徹底的に分析し対策にまとめました。
出題元も示しています。
目次
- アカラシア
- GERD&NERD
- 食道・胃静脈瘤
- 食道癌
- 好酸球性食道炎(EoE)
- 急性食道粘膜病変(AEML)
1. アカラシア
【関連出題:10集 問6、問12/9集 問12】
① 疫学・病態
- 概念: 下部食道括約筋(LES)の弛緩不全と、食道体部の蠕動運動消失を主徴とする原因不明の一次性食道運動障害。Auerbach神経叢の変性・消失が関与する。
- 疫学: 成人に好発するが、小児から高齢者まで幅広く発症し、特定の好発年齢はない。男女差はなく、発症頻度は年間人口10万人あたり1例程度と極めて稀である。
② 診断
- 臨床症状: つかえ感(液体もつかえる)、口腔内への未消化物・液体の逆流(夜間就寝時に多く、胃酸を含まないため酸味や苦味がないのが特徴)、胸痛、咳嗽、体重減少。
- 食道造影検査: 鳥の嘴状の平滑な狭小像(bird-beak sign)が特徴。直線型(F型)とシグモイド型(S型)に分類され、屈曲が強いものは「進行シグモイド型」と呼ばれる。
- 食道内圧検査 : 診断のゴールドスタンダード。LESの弛緩不全を示す IRP (Integrated Relaxation Pressure) 値の上昇と、食道体部の蠕動波消失を確認する。
- シカゴ分類 (ver. 4.0): HRM所見に基づき、以下の3つのサブタイプに分類される。
●過去問
内圧検査所見
必須所見:LES弛緩不全、一次蠕動波消失
食道内圧上昇(>胃)
LES静止圧上昇
同期性収縮波
※上昇、低下を逆にしてひっかけ選択肢が作られていた

【表1.1】アカラシアのシカゴ分類(Type I〜III)と特徴
参考 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000803/
| サブタイプ | 呼称 | 内圧波形の特徴 | 治療反応性 |
|---|---|---|---|
| Type I | Classic | 100%の蠕動波消失。食道内に圧上昇を認めない。 | 良好 |
| Type II | Panesophageal compression | 水嚥下の20%以上で、食道全体にわたる一様な圧上昇(食道内圧>胃内圧)を認める。 | 最も良好 |
| Type III | Spastic | 水嚥下の20%以上で、食道下部に非推進性の同期性・異常収縮(痙攣性収縮)を認める。 | 外科的切除・POEMが必須 |
- 内視鏡所見:
- 通常鏡検での代表的3大所見:食道内の拡張、食物残渣・液体の貯留、泡沫状唾液の貯留。
- 特徴的・新規内視鏡所見(試験頻出):
【表1.2】アカラシアを示唆する特殊内視鏡所見
| 所見名 | 特徴・解説 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| Esophageal rosette | 深吸気時に下部食道狭小部への全周性の粘膜襞の引き連れ(ロゼット様)を認める。 | ほとんどのアカラシア症例(LES広範囲障害)で陽性。 |
| Pinstripe pattern | 食道粘膜表層を全周性に縦走する、ごく細いシワ状の線(内輪筋の収縮に関連)。 | 初期アカラシア患者の約60%に観察される。 |
| Gingko-leaf sign | 深吸気時にも全周性の柵状血管下端が観察できず、下部食道が外側に凸形状(銀杏の葉様)を呈する。 | LESの一部分(主に下端)が障害されたアカラシア初期像とされる。 |
| Champagne glass sign | 胃内反転操作時にEGJ(食道胃接合部)が弛緩しているように見え、下部食道の縦断がシャンパングラス様に見える。 | LESの中部から上方部位が選択的に障害された病態を示す。 |




参考https://kunokatura.xsrv.jp/medicine/202410/dysphagia_EGD/
③ 治療
- 一般的方針: 根本的治療はなく、LES圧を低下させて重力により食道を通過させることが基本となる。
【表1.3】アカラシアに対する各治療法の比較
| 治療法 | 特徴 | メリット・第一選択 | デメリット・合併症 |
|---|---|---|---|
| POEM (経口内視鏡的筋層切開術) | 内視鏡下で粘膜下トンネルを作成し、食道〜胃の筋層を切開する。 | 標準治療(第1選択)。筋層切開長を自在に調整できるため、Type IIIアカラシアに最適。 | 約15%で症候性GERDを合併する。 |
| Heller-Dor手術 (腹腔鏡下筋層切開+Dor噴門形成術) | 外科的手術。LES筋層を切開し、逆流防止のためDor法(胃底部を食道前壁に巻き付ける)を併用する。 | 長期成績が確立している(有効率80〜95%)。 | 侵襲(腹腔鏡下が標準) |
| バルーン拡張術 | 30mm径のRigiflexバルーンを用いてLESを機械的に引き裂く。 | 保存的であり、手術・POEM不能例や高齢者に適応。 | 若年者で効果不良。有効率は75%程度、反復が必要。食道穿孔。 |
| 薬物療法 | カルシウム拮抗薬(ニフェジピン)、一硝酸イソソルビド | 低侵襲 | 保険適用外 |
参考 大分県中津市と連携協定を締結しました | 国立大学法人 神戸大学 (Kobe University)
●過去問
Heller法→アカラシアの手術
Dor法、Nissen法、Toupet法、Belsy-MarkⅣ法→ヘルニア・GERD
2. GERD・NERD
【関連出題:10集 問26/9集 問8】
① 疫学・病態
- 概念: 胃内容物(主に胃酸)の食道内への逆流により、食道粘膜傷害(びらん・潰瘍)や不快な逆流症状(胸やけ・呑酸など)を引き起こす病態。
- 逆流性食道炎: 内視鏡的に食道粘膜傷害を認める。
- 非びらん性胃食道逆流症 (NERD): 典型的な逆流症状を有するが、内視鏡で粘膜傷害を認めない。
- 疫学: 日本人の有病率は約10%で、近年緩やかに増加傾向にある。GERD全体の60〜70%はNERDが占める。
- 誘因: 高脂肪食、肥満(胃内圧上昇による逆流誘発)、食道裂孔ヘルニア、H. pylori非感染(酸分泌が保たれているため)。
●過去問
ピロリ陰性、除菌後→GERDの誘因
再発多い(薬を止めると75%再発)
症状と内視鏡の重症度は相関しない
塩分がリスク→×
後発は右側(バレット腺癌も)
② 診断
- 臨床症状:
- 典型症状: 胸やけ(胸骨後部の焼けるような感覚)、呑酸(胃内容物の口内・咽頭への逆流感)。
- 非典型症状: 胸痛、慢性咳嗽、喘息、咽喉頭違和感、睡眠障害。
- 問診票: 診断および効果判定に F-scale (Frequency Scale for the Symptoms of GERD) や GerdQ が汎用される。
- 内視鏡診断(ロサンゼルス分類): ロサンゼルス(LA)分類で食道粘膜傷害をA〜Dの4段階に分類する。
- 軽症逆流性食道炎: Grade A または B。
- 重症逆流性食道炎: Grade C または D。
- ※本邦では、粘膜傷害のないGrade N、微小変化のみのGrade Mを加えた「改訂LA分類」が広く用いられる。
- PPI (P-CAB) テスト: 内視鏡検査を行わず、低侵襲かつ低コストで GERD 症状が酸逆流によるものか否かを判別するための診断的治療法(保険適用外)。
- 食道インピーダンスpH検査: 薬物治療抵抗性(PPI抵抗性)GERDの精密検査。酸逆流だけでなく非酸(弱酸)逆流や空気逆流を検出可能。

【表2.1】NERDの病態分類(Rome IV基準)
| 分類 | 食道内酸曝露時間 | 症状と逆流の関連 | 特徴・薬物治療への反応 |
|---|---|---|---|
| ① 真のNERD | 異常高値 (過剰な酸) | あり | 酸分泌抑制薬(PPI/P-CAB)が有効。 |
| ② 逆流過敏症 | 正常 | あり | 酸以外の逆流や食道知覚過敏が関与。酸抑制薬の反応は劣る。 |
| ③ 機能性胸やけ | 正常 | なし | 逆流自体と症状に関連がない。酸抑制薬は無効。 |
③ 治療
- 治療目標: 症状の改善、QOLの向上、合併症(食道狭窄、出血、貧血)の予防。
【表2.2】逆流性食道炎・NERDの薬物治療指針(ガイドライン2021準拠)
| 対象分類 | 第一選択薬 | 投与期間 | 維持療法の指針 |
|---|---|---|---|
| 重症 (Grade C/D) |
P-CAB (ボノプラザン 20mg) |
4〜8週間 | P-CAB (ボノプラザン 10mg) の継続投与が推奨される。 |
| 軽症 (Grade A/B) |
P-CAB または 従来のPPI | 4〜8週間 | PPIまたはP-CAB。オンデマンド療法(頓服)も検討。 |
| NERD | 従来のPPI (エソメプラゾール等) ※半数は改善困難 |
4週間 | 初期治療に反応した場合は、PPIの間欠投与(維持療法)が主流。 |
- 酸分泌抑制薬以外の併用薬:
- アルギン酸塩・制酸薬: 胃酸逆流抑制効果があり、PPI/P-CABと併用可能な治療法。作用発現は早いが短時間で排泄される。
- 消化管運動機能改善薬、漢方薬(六君子湯など)。
- 生活指導: 肥満者に対する減量、禁煙、遅い時間の夕食回避(就寝間際の食事制限)、就寝時の頭位挙上。
- ひっかけ対策(重要TOPICS):
- PPI抵抗性逆流症状の原因として、無意識の随意運動であるSGB (supragastric belching:食道内ゲップ) や反芻症が注目されている。これらは器質的疾患ではなく行動障害の一種であり、認知行動療法が極めて有効である。
3. 食道・胃静脈瘤
【関連出題:10集 問3、問8/9集 問3】
① 疫学・病態
- 概念: 肝硬変などの門脈圧亢進症を背景として、側副血行路である食道や胃壁の粘膜下層の静脈が拡張することで形成される。
- 疫学: 肝硬変患者の半数以上で認められ、破裂して出血を来した場合は死亡率が高く極めて危険である。
- 胃静脈瘤(IGV)の分類: 胃静脈瘤のうち、食道静脈瘤(EV)と連続性のない胃底大弯側や噴門部に単独で存在するものを孤立性胃静脈瘤 (isolated gastric varices: IGV) と呼ぶ。
② 診断
- 上部消化管内視鏡検査 (EGD): 診断のゴールドスタンダード。以下の形態・所見から破裂リスク(予防治療の適応)を評価する。
- 形態分類: 直線状(F1)、数珠状(F2)、腫瘤状(F3)。
- 発赤所見 (RC sign: red color sign): 静脈瘤表面の赤いスポット(cherry-red spot, hematocystic spot)。RC陽性(RC+)は破裂・出血のリスクが極めて高く、予防治療の絶対適応となる。

参考https://www.asakura.co.jp/lp/naikagaku12ed/digitalappendix/src/%E2%93%94%E5%9B%B311-3-15.html
- 超音波内視鏡 (EUS): 局所の血行動態診断(供血路や穿通枝:perforating veins の確認)や、SMTとの鑑別に極めて有用。
- ※食道のEUSにおいて脱気水充満法は食道内の水が流れてしまい描出が困難なため、ゼリー充満法(内視鏡視野確保用ゲルなどの充満)が非常に有用である。
③ 治療
- 一般的方針: 出血時の緊急止血治療と、破裂を防ぐための予防治療(一次予防・二次予防)に分けられる。
【表3.1】食道静脈瘤 (EV) と 孤立性胃静脈瘤 (IGV) の治療対比
| 項目 | 食道静脈瘤 (EV) | 孤立性胃静脈瘤 (IGV) |
|---|---|---|
| 薬 | β遮断薬(プロプラノロール/インデラル)、一硝酸イソソルビドの併用。 | 確立した予防薬無し。 |
| 内視鏡① (標準的・緊急止血) |
EVL (内視鏡的静脈瘤結紮術) ゴムリングで緊縛。簡便で安全だが、供血路が残るため再発率が高い。 |
CA (シアノアクリレート) 注入法 ヒストアクリル等の組織接着剤をリピオドールと混合して静脈瘤内に局注し、瞬時に固める。 |
| 内視鏡治療② (根治的・予防治療) |
EIS (内視鏡的硬化療法) 5%塩酸エタノールアミンオレエート:EOを血管内注入、1%ポリドカノール:ASを血管外注入。再発率が低い。 |
EUSガイド下コイル留置併用CA注入 コイルを先に留置することで、CAが肺や大循環へ流入(リーク)する塞栓症リスクを低下させる。 |
| IVR(カテーテル) | 門脈大循環シャント術(TIPS)など(他法無効時)。 | BRTO (バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術) 左腎静脈からバルーンカテーテルを挿入し、流出路を閉塞した状態で硬化剤を注入する根治術。 |

参考 https://teikyo-rad.com/medical/ivr/tips/
4. 食道癌
① 疫学・病態
- 組織型: わが国の食道癌の90%以上は扁平上皮癌である。下部食道のBarrett食道から発生する「食道腺癌」は5%程度を占めるにすぎないが、近年増加傾向にある。
過去問
バレット腺癌本邦ではSSBEが多い。
右壁が多い。
酸逆流だけでなく胆汁酸逆流も関与。
病理:粘膜筋番2重化
食道胃接合部の定義 本邦:柵状血管下端 欧米:胃粘膜ひだの上演 - リスク因子: 扁平上皮癌は喫煙と飲酒が強力なリスク。特に、少量飲酒で顔が赤くなる体質(フラッシャー:ALDH2不活性型)は発癌リスクが極めて高い。
- 予後規定因子: 臨床病期(cStage)が進行するほど低下する。食道切除術後の5年生存率はpStage 0で約85.0%、pStage IIIで約38.5%である。
② 診断
- 早期診断(拾い上げ): 白色光での通常観察では極初期の癌はわずかな発赤や血管透見消失としてしか認識されない。
- NBI (Narrow Band Imaging) / BLI (Blue Laser Imaging) 拡大観察: 狭帯域光を用いて、がん部を茶色の不整な微小血管(IPCL:Intraepithelial Papillary Capillary Loop)として明瞭に描出する。ヨード染色の代替としてスクリーニングの標準である。
- 深達度診断における注意点:
- かつては深達度診断に超音波内視鏡(EUS)が推奨されていたが、大規模な多施設共同試験において、通常観察+NBI拡大観察後にEUSを追加しても正診率は有意に向上せず、むしろ深く読み間違える overdiagnosis が増加したため、現在EUSの追加意義は否定(推奨されない方向)されている。
- 遠隔転移・進行度評価: CT、PET-CT、および切除可能性を評価する「審査腹腔鏡(腹膜播種の有無を確認)」などを実施する。
③ 治療:A. 内視鏡的治療 (EMR/ESD)
- 内視鏡切除の適応基準: 食道表在癌(cT1)のうち、リンパ節転移のない病変が対象。
【表4.1】食道表在癌の深達度分類とリンパ節転移確率・追加治療適応
| 深達度分類 | 組織学的浸潤範囲 | リンパ節転移確率 | 内視鏡治療の適応基準 | 追加治療(外科・放射線)の必要性 |
|---|---|---|---|---|
| EP (T1a) | 上皮内 | 〜0.4% | 絶対適応(一括切除可能病変) | 不要(内視鏡治療のみで治癒) |
| LP (T1a) | 固有粘膜 | 〜0.4% | 絶対適応 | 不要 |
| MM (T1a) | 粘膜筋板 | 5.6% | 相対適応 | 脈管侵襲(-):患者の年齢・合併症を考慮し個別に判断。 脈管侵襲(+):追加治療が必要。 |
| SM1 (T1b) | 粘膜下層 200μm 以浅 | 25.3% | 相対適応 | 原則として追加治療が必須(転移率が高いため)。 |
| SM2 (T1b) | 粘膜下層 200μm 以深 | 25.0% | 適応外(原則、外科手術へ) | 必須(最初から外科切除または化学放射線療法の対象)。 |

参考 https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/esophageal/003/index.html
●過去問
EP/LPM、脈管侵襲陰性→追加治療なし。年1-2回のEGD(異所性再発が10-15% のため)
MM +脈管陽性やSMの場合は追加治療が推奨される
- 切除後合併症・狭窄対策: 食道粘膜の全周または 3/4周以上を剥離・切除した場合、高確率で術後瘢痕狭窄を来すため、トリアムシノロン(ステロイド)の局所注入、または経口ステロイド(プレドニゾロン)の内服投与による狭窄予防が必須である。
④ 治療:B. 外科的切除(集学的治療)
- 臨床病期(cStage)別標準外科治療アルゴリズム:
【表4.2】cStage別標準治療(患者に耐術能がある場合)
| 臨床病期 (cStage) | 病態・深達度 | 標準治療(標準術式) |
|---|---|---|
| cStage 0 | cT1a (粘膜内癌、内視鏡治療適応外病変) | 外科的食道切除術(術前療法なし)。 |
| cStage I | cT1b (粘膜下層浸潤癌、N0M0) | 外科的食道切除術(D2郭清、術前療法なし)。 ※JCOG0502試験にて、根治的化学放射線療法(dCRT)の手術に対する非劣性が証明されたため、dCRTも選択肢。 |
| cStage II / III | 局所進行癌 (T2-3, Nany, M0) | 術前化学療法 (NAC-DCF) + 外科的食道切除術 (3領域郭清・胃管再建) ※JCOG1109試験(後述)によるパラダイムシフト。 |
| cStage IVa | 切除不能局所進行癌 (T4b) | 根治的化学放射線療法 (dCRT) が標準。 ※dCRT後に癌が遺残・局所再発した場合は「救済手術(サルベージ手術)」を行うが、合併症リスクが極めて高い。 |
●過去問
cT2-3N0M0→術前化学療法+手術 ひっかけ:術前化学放射線療法
〇胃管再建
抗縦郭・・・最短距離だが、虚血など合併症があると致命的。
胸骨後・・・屈曲や鎖骨の圧迫などがあるが、比較的安全。
胸骨前・・・安全だが、整容×
標準術式は食道切除術+3領域リンパ節郭清(頚部・胸部・腹部)
CRTの根治照射は50-60Gy。FPと組み合わされる。3領域の照射は×
根治CRTの後の遺残・再発に対する手術=サルベージ手術
根治CRTの後の遺残・再発はサルベージ手術やPDTなど 追加照射はしない。
食道NEC+転移→シスプラチン+エトポシド
- 術式と再建:
- 右開胸(または鏡視下)食道切除術+3領域リンパ節郭清(頚部・胸部・腹部)。
- 反回神経周囲リンパ節郭清: 胸部中部食道癌において、左右の反回神経周囲はリンパ節転移頻度が最も高く、極めて入念な郭清を要する(反回神経麻痺を予防するため、神経刺激装置を用いる)。
- 再建臓器: 胃管(胃)を用いることが最も多く、胃が使えない場合は結腸、空腸を用いる。
- 低侵襲手術の進歩:
- 胸腔鏡下食道切除術が全体の2/3を占める。さらにロボット支援下手術(2018年〜)、縦隔鏡下手術(2020年〜)が保険適用となり、増加している。
- 主な術後合併症: 肺炎などの呼吸器合併症 (13.1%)、縫合不全 (12.5%)、反回神経麻痺。術後在院死亡率は約2%である。


参考 https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/18527
💡 試験の超超最重要トピックス:JCOG1109 (NExT) 試験
cStage II/III(T4除く)の局所進行食道扁平上皮癌の術前療法において、従来の標準であった「術前CF療法(シスプラチン+5-FU)」に対し、「術前DCF療法(ドセタキセル+シスプラチン+5-FU)」の有意な全生存期間(OS)延長効果が証明された(3年生存率:CF 62.6% vs DCF 72.1%、ハザード比0.68)。これにより、現在の本邦における標準治療は「術前DCF療法 3コース ➡ 食道切除術」となっている。なお、術前CFRT(化学放射線療法)はCF群に対するOSの優越性を示せなかった。
⑤ 治療:C. 化学療法・放射線療法(進行・再発)
【表4.3】遠隔転移・切除不能進行癌の一次〜三次薬物療法レジメン
| 治療段階 | 患者ステータス / 病理 | 推薦される標準薬物療法レジメン |
|---|---|---|
| 一次治療 | HER2陽性(腺癌など) | 標準化学療法(5-FU+プラチナ) + トラスツズマブ (ToGA試験) |
| HER2陰性 / 扁平上皮癌 | 以下の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)併用療法が第1選択 : ① CF + ペムブロリズマブ (KEYNOTE-590試験) ② CF + ニボルマブ (CheckMate 648試験) ③ ニボルマブ + イピリムマブ (CheckMate 648試験) |
|
| 二次治療 | ICI治療増悪後 | パクリタキセル(PTX) または ドセタキセル(DTX) のタキサン系単剤 |
| 一次治療でICI未使用例 | ニボルマブ単剤 (ATTRACTION-3試験:タキサン系群に対し有意なOS延長効果) | |
| 三次治療 | 二次治療増悪後 | タキサン系単剤(前治療で使用していない薬剤)またはイリノテカン |

日本食道学会編「食道癌診療ガイドライン 2022年版」(金原出版)より作成
5. 好酸球性食道炎(EoE)
① 疫学・病態
- 概念: 食物抗原などがアレルゲンとなり、食道壁を中心に慢性的なアレルギー性・免疫性炎症を引き起こす慢性好酸球性消化管疾患。
- 疫学: 中年(30〜50歳代)に多く、70〜80%が男性である。気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患の合併頻度が高い (50%以上)。近年、わが国でも増加傾向にある。
●過去問
男性に多い
アレルギー疾患合併しがち
縦走溝が最も信頼性が高い。 (輪状溝もあるが)
生検 15/HPF以上の好酸球
② 診断
- 臨床症状: 嚥下困難(つかえ感)、食物嵌頓、胸やけ(GERD様症状だが酸分泌抑制薬に抵抗性)。
- 内視鏡所見: 特徴的な内視鏡像が約80%で認められ、以下が代表的である。
【表5.1】好酸球性食道炎 (EoE) の特徴的内視鏡所見
| 所見名 | 特徴・解説 | 出現頻度(感度) |
|---|---|---|
| 縦走溝 (linear furrows) | 食道長軸方向に沿って走る細い溝状の陥凹。 | 52.7% (最も多い) |
| 輪状溝 (ring formation) | 食道長軸に直角に同心円状にみられる輪状の狭窄・しわ。アカラシアとの鑑別を要する。 | 33.3% |
| 白色滲出物 (white exudates) | 食道粘膜表面に付着する小さな白色の点状滲出物。カンジダ白斑に酷似する。 | 34.8% |
| 血管透見低下・粘膜浮腫 | 粘膜の肥厚により、正常な微小血管が透見できなくなる。 | 頻発 |
参考 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/presentation/202405/
- 組織診断(確定診断): 内視鏡生検にて、食道上皮内に 15個 / HPF (high-power field) 以上の好酸球浸潤を確認する。
- ※診断感度を100%に近づけるため、食道の複数箇所(少なくとも5箇所以上)から生検を行うことが強く推奨される。
③ 治療
- 薬物療法:
【表5.2】好酸球性食道炎の薬物治療ステップ
| 段階 | 治療法・薬剤 | 作用・目的 |
|---|---|---|
| 第1選択 | PPI (プロトンポンプ阻害薬) の標準量8週間投与 | 好酸球の浸潤自体を減少させ、約50%以上の患者で臨床的・組織学的改善が得られる。 |
| 第2選択 | ステロイド局所投与 (嚥下療法) | PPI抵抗性症例に対する。フルチカゾンやブデソニドの経口吸入薬を吸入せずに「飲み込む」(食道粘膜へ局所作用させるため)。 |
| その他 | 食事療法 | アレルゲン除去食(牛乳、小麦、卵、大豆、甲殻類、ナッツ類の除去:6-food elimination diet)。 |
| 重症例 | 内視鏡的バルーン拡張術 | 薬物療法に抵抗する難治性の線維性食道狭窄を合併した場合に考慮される。 |
6. 急性食道粘膜病変(AEML)
【関連出題:9集 問10】
① 疫学・病態
- 概念: 急激に発生する広範な食道粘膜のびらん・壊死・潰瘍性病変。内視鏡的に粘膜の著明な黒色化を呈することから、「黒色食道 (black esophagus) / 急性壊死性食道炎」とも呼ばれる。
- 疫学: 高齢男性に多く発症する。
- 併存疾患: 糖尿病(特に糖尿病性ケトアシドーシス)、アルコール多飲、腎不全、栄養不良、虚血(低血圧状態)、敗血症、悪性腫瘍を合併していることが多い。
- 発症機序: 食道の組織学的血流は近位側に比べて遠位(下部食道)で乏しく虚血に陥りやすい。このため、全身の血流低下や胃酸逆流、代謝障害が加わって下部食道を中心に壊死が進行する。
② 診断
- 臨床症状: 急激な上部消化管出血(吐血、黒色便)、嚥下困難、激しい胸痛。
- 内視鏡所見: 胃粘膜との境界が明瞭(EGJで途切れる)な、食道遠位3分の2を中心とする全周性の著明な黒色粘膜壊死、びらん、易出血性。
- 鑑別診断: 腐食性食道炎(強酸・強アルカリの誤飲)、重症逆流性食道炎、感染性食道炎(ヘルペス・サイトメガロ)、放射線照射後食道炎を除外する。
参考 https://sakaemachi-gec.com/archives/5442
●過去問
糖尿病合併が多い
遠位2/3 に多い
食道狭窄10 % 食道穿孔6.8% 膿瘍5.7%
合併症なければ保存治療
血流障害が原因
③ 治療
- 一般的方針: 穿孔や縦隔炎などの重篤な合併症(25〜40%で発生するとされ、食道穿孔は6.8%、縦隔膿瘍は5.7%)を来していない限り、保存的内科治療が原則となる。
- 内科的治療:
- 絶飲食 + 十分な静脈路確保による多量輸液。
- 強力な酸分泌抑制薬 (PPI または P-CAB) の静脈内投与(逆流する胃酸による食道壊死の悪化を防ぐ)。
- 必要に応じた抗菌薬の投与、および基礎疾患(糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全など)の是正。
- 予後: 合併症がなければ大部分の症例が内科的保存加療で急速に改善する。ただし、治癒過程で約10.2%に食道狭窄を来すことがあり、その場合は後日に内視鏡的バルーン拡張術を要する。
7. その他
➀食道裂孔ヘルニア
●過去問(巨大食道裂孔ヘルニア)
亀背の高齢女性に多い。
手術は腹腔鏡下噴門形成術。軸捻転・嵌頓による虚血があると緊急手術となる。
➁解剖
〇過去問
胸管は1本!

参考:https://visual-anatomy-data.net/comment/ka/kyo-thoracic-duct.html
奇静脈弓は奇静脈と半奇静脈を結ぶ×
奇静脈弓を介して上大静脈にそそぐ。

参考:https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/4691
左反回神経→大動脈を反回
右反回神経→右鎖骨下動脈を反回

参考:https://www.kango-roo.com/learning/3309/
食道生理的狭窄部
第1狭窄部(食道入口部 / 食道起始部)
第2狭窄部(大動脈弓・左主気管支交叉部 / 気管分岐部)
第3狭窄部(食道裂孔部 / 横隔膜貫通部)
食道と大動脈の位置関係
下縦隔では食道はAoの左側を通る

参考:https://www.kango-roo.com/learning/8442/
まとめ
食道領域は、特徴的な画像所見、診断基準、治療選択の組み合わせが頻出です。アカラシアのChicago分類、GERD・NERDの病態分類、静脈瘤治療、食道表在癌の深達度、JCOG1109、好酸球性食道炎の診断基準、AEMLの初期対応を優先して復習しましょう。
コツコツDr.Gと一緒に、1テーマずつ積み上げていきましょう。

