こんにちは、消化器内科医のコツコツDr.Gです。
今回は、消化器病学会専門医試験の「胃」領域を無料公開します。
試験対策全体の概要はこちら:【2026年】消化器病専門医試験対策|忙しい医師のための勉強法
日本消化器病学会専門医試験(第9集・第10集)をお手元に用意して、問題の解説として利用していただくと良いかと思います。
本書は、消化器病学会専門医試験(第9集・第10集)の出題傾向、および最新の『胃癌治療ガイドライン2025(第7版)』に厳密に準拠し、胃の主要6大疾患における「疫学・病態」「診断」「治療」を視覚的な表と図を用いて整理した決定版テキストです。
目次
- 胃癌
- 自己免疫性胃炎(A型胃炎)
- 胃GIST
- 胃MALTリンパ腫
- 機能性ディスペプシア(FD)
- H. pylori感染症
- 胃の解剖・生理・消化管ホルモン
1. 胃癌
【関連出題: 10集 問5, 12, 13, 14/9集 問13, 14, 15, 17, 22, 23, 29, 30, 31】
① 疫学・病態
予後規定因子:
早期胃癌における唯一の独立した予後規定因子は「リンパ節転移の有無(および個数)」である。
腫瘍径や組織型(分化・未分化)、肉眼型(隆起・陥凹など)、胃内占居部位などは、単変量で関連しても独立した予後因子とはならない。
② 診断
内視鏡診断: 白色光観察で疑わしい病変(発赤、褪色、凹凸不整など)を拾い上げ、NBI拡大内視鏡にて病変境界(demarcation line)や微細血管・表面構造の乱れ(irregular microvascular/microsurface pattern)を観察して診断する。
【表1.1】良性胃潰瘍 vs 悪性潰瘍(胃癌)の内視鏡・X線所見
| 評価項目 | 良性胃潰瘍 | 悪性潰瘍(胃癌に伴う陥凹) |
|---|---|---|
| 辺縁・境界 | 境界は明瞭でなだらか。平滑。 | 不規則な鋸歯状、虫食い状(蚕食像)。 |
| 趨襞(ひだ)の集合 | 潰瘍中心に向かって細くなりつつ、スムーズに集中。 | 癌組織の浸潤により棍棒状肥大、癒合、先端の中断・先細り。 |
| 趨襞集合の様式 | 治癒と再発を反映し、多中心性の引き連れを見ることがある。 | 腫瘍の中心に向かって偏心性または不規則に引き連れる。 |
| 陥凹底・白苔 | 均一で一様な厚い清潔な白苔で覆われる。 | 厚さが不均一で、出血や壊死組織を伴う汚い白苔。 |
| 再生上皮 | 辺縁から均一に薄い再生上皮が伸びる。 | 未分化型などで、陥凹底に島状に残る健常粘膜(再生上皮島)が出現。 |
●過去問
厚い白苔→良性潰瘍の所見
審査腹腔鏡 (Staging Laparoscopy): CTで遠隔転移を認めない大型3型・4型進行胃癌に対し、腹膜播種(P1)や腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)の有無を術前に確認するために強く推奨される(治療方針決定に不可欠)。
③ 治療

胄癌ガイドライン2025 より作成
内視鏡的切除 (EMR/ESD) の適応
リンパ節転移の危険性が1%未満と推定される粘膜内癌(cT1a)が適応となる。
【表1.2】早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)絶対適応基準 ●過去問
| 組織型分類 | 潰瘍所見 (UL) の有無 | 腫瘍径制限 | 治療区分 |
|---|---|---|---|
| 分化型優位 | UL (-) | 制限なし(上限なし) | 絶対適応 |
| 分化型優位 | UL (+) | 30 mm (3 cm) 以下 | 絶対適応 |
| 未分化型優位 | UL (-) | 20 mm (2 cm) 以下 | 絶対適応 |
| 未分化型優位 | UL (+) | ーー | 適応外(外科切除) |

胄癌ガイドライン2025 より作成
外科的手術の標準
●過去問
BillrothⅠ法の吻合部潰瘍
原因:血流障害、ガストリンによる胃酸分泌↑、減酸処置が不十分
治療:酸分泌抑制薬(維持が必要) 保存でダメなら手術。
脾臓温存(非脾摘)が標準: 大弯線に浸潤しない(U領域などの)進行胃癌に対する胃全摘術において、脾門部郭清のための定型的脾摘の生存率向上効果は否定され、合併症リスクを高めるため、現在は「脾臓温存(非脾摘)」が標準治療である(JCOG0110試験)。
食道浸潤胃癌: 食道への浸潤長が3cm以下であれば、縦隔郭清を行う場合でも開胸アプローチは不要であり、経裂孔的(経腹的)に郭清を行うことが標準とされる。
減量手術(Reduction surgery)の否定: 遠隔転移など非治癒因子を持つ切除不能進行胃癌に対し、無症状であるにもかかわらず原発巣を縮小・切除する減量手術は、予後を延長しないため「強く非推奨」である(REGATTA試験)。
術前補助化学療法× 術後補助化学療法〇
進行・再発胃癌の化学療法
個別化治療(精密医療)が進んでおり、バイオマカー(HER2、CLDN18.2、PD-L1、MSI/MMR)に基づき一次治療を決定する。
【表1.3】切除不能進行・再発胃癌の薬物治療アルゴリズム
| 治療段階 | 患者ステータス / バイオマーカー | 推奨される標準レジメン | 根拠となる臨床試験など |
|---|---|---|---|
| 一次治療 | HER2 陽性 | S-1 (またはCapecitabine) + Cisplatin + Trastuzumab (抗HER2抗体) | ToGA試験(生存期間を有意に延長) |
| HER2 陰性 / CLDN18.2 陽性 | S-1 (またはCapecitabine) + Oxaliplatin + Zolbetuximab (抗CLDN18.2抗体) | SPOTLIGHT / GLOW試験 | |
| HER2 陰性 / CLDN18.2 陰性 | フッ化ピリミジン+プラチナ(SOX/CapeOX等)+ Nivolumab (抗PD-1抗体) | CheckMate 649 / ATTRACTION-4試験 | |
| 二次治療 | 全患者共通 | Paclitaxel + Ramucirumab (抗VEGFR-2抗体) | RAINBOW試験(圧倒的な標準治療) |
| 三次治療〜 | 全患者共通 | Nivolumab (抗PD-1抗体) / Trastuzumab Deruxtecan (T-DxD) (HER2陽性のみ) | ATTRACTION-2 / DESTINY-Gastric01 |

●過去問
二次治療は?→RAM PTX
胄癌ガイドライン2025 より作成
2. 自己免疫性胃炎(A型胃炎)
【関連出題: 10集 問11/9集 問27】
① 疫学・病態
自己抗体: 抗壁細胞抗体および抗内因子抗体といった自己抗体が原因となり発症する。
萎縮パターン: 壁細胞が集中する胃体部主体に高度な粘膜萎縮が起こり、胃酸分泌機能が極度に低下する。幽門前庭部(G細胞が分布)は通常正常に保たれる。逆萎縮。
高ガストリン血症: 無酸・低酸状態に対するフィードバックにより、幽門前庭部のG細胞からガストリンが過剰分泌され、著明な高ガストリン血症を呈する。
胃MALTリンパ腫との非関連: A型胃炎は胃癌や胃NETの発生リスクを高めるが、胃MALTリンパ腫(H. pylori感染と強く関連)の発生とは関連しない。
【表2.1】自己免疫性胃炎(A型) vs ピロリ感染胃炎(B型)の対比
| 評価項目 | 自己免疫性胃炎(A型胃炎) | H. pylori 関連慢性胃炎(B型胃炎) |
|---|---|---|
| 主な病因 | 自己免疫(抗壁細胞抗体、抗内因子抗体) | Helicobacter pylori 感染 |
| 萎縮の主座 | 胃体部・胃底部主体(前庭部は保持) | 幽門前庭部主体から全胃へ拡大(環境性) |
| 胃酸分泌 | 無酸・極度な低下 | 低下〜正常(萎縮の程度に依存) |
| 血清ガストリン | 著明な高値(数千 pg/mL 以上) | 正常〜軽度高値 |
| 合併する腫瘍 | 胃NET (1型カルチノイド)、胃癌 | 胃癌、胃MALTリンパ腫 |
| 貧血の合併 | 悪性貧血(VitB12欠乏)、鉄欠乏性貧血 | 鉄欠乏性貧血(活動性胃炎時など) |
| 他自己免疫疾患 | 高頻度で合併(橋本病、1型糖尿病など) | なし |
② 診断
血清生化学検査: 血清ガストリン値が著明高値。ペプシノーゲン(PG)値では、胃体部腺(胃底腺)主細胞の減少を反映して血清PG I濃度が極めて低値となり、PG I/II比も著しく低下する。
内視鏡所見: 胃体部主体の褪色・血管透見(高度萎縮)。粘膜下腫瘍様の多発隆起(ガストリン刺激によるECL細胞過形成が原因の胃NET 1型)を認める。


参考 https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758110754/303.html
③ 治療
悪性貧血: ビタミンB12(内因子の欠乏による吸収障害)の筋肉内注射。
鉄欠乏性貧血: 胃酸低下に伴う鉄吸収不全に対し、鉄剤投与を行う。
サーベイランス: 胃癌、および多発性胃NET(1型)の早期発見のため、年1回のEGD.
【図2.2】自己免疫性胃炎(A型)の病態・合併症進行メカニズム

●過去問
自己免疫性胃炎に関係あり→胃癌、鉄欠乏性貧血、NET、自己免疫性甲状腺炎、1型糖尿病
ひっかけ 2型糖尿病
3. 胃GIST
【関連出題: 10集 問9, 10】
① 疫学・病態
起源細胞: カハール介在細胞あるいはその前駆細胞から発生する、固有筋層由来(第4層)の非上皮性悪性腫瘍。
転移様式: 主に血行性転移(肝転移、肺転移など)を来す。リンパ節転移を来すことは極めて稀(1%未満)である。
② 診断
超音波内視鏡 (EUS) 所見: 第4層(固有筋層)と連続する、均一な低エコー性粘膜下腫瘍(SMT)として描出される。平滑筋腫や神経鞘腫も全く同一のEUS所見を呈するため、画像のみでの鑑別は困難。
【表3.1】胃固有筋層由来SMTの免疫染色による鑑別
| 腫瘍名 | c-kit (CD117) | DOG1 | CD34 | Desmin (平滑筋マーカー) | S-100 (神経マーカー) |
|---|---|---|---|---|---|
| GIST | 陽性 (+) | 陽性 (+) | 陽性 (+) | 陰性 (-) | 陰性 (-) |
| 平滑筋腫 | 陰性 (-) | 陰性 (-) | 陰性 (-) | 陽性 (+) | 陰性 (-) |
| 神経鞘腫 | 陰性 (-) | 陰性 (-) | 陰性 (-) | 陰性 (-) | 陽性 (+) |
③ 治療
手術(切除)適応

参考 https://www.do-yukai.com/medical/116.html
●過去問
組織学的にGISTと確定診断された場合、サイズが2cm未満であっても、悪性のポテンシャルを持つため「原則手術適応」となる。
確定診断未確定であっても、EUS等で増大傾向、潰瘍形成、内部不均一、辺縁不整などのハイリスク所見(high-risk features)を認める場合は手術を考慮する。
術式: リンパ節転移が稀であるため、広範な郭清は不要。腫瘍の局所切除(胃部分切除術)が標準術式
分子標的薬療法: 切除不能・再発GISTや、術後高リスク群(腫瘍径>10cm、核分裂像>10/50HPF、術中腫瘍破裂など)に対しては、チロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブ(Imatinib)の投与(術後補助化学療法は3年間)が標準である。
4. 胃MALTリンパ腫
【関連出題: 10集 問25/9集 問32】
① 疫学・病態
病因: 胃粘膜には通常リンパ組織は存在しないが、H. pylori感染による持続的な抗原刺激(炎症反応)によって反応性にMALT(粘膜関連リンパ組織)が形成され、これが背景となってB細胞がモノクローナルに腫瘍性増殖を起こす低悪性度B細胞性リンパ腫である。
② 診断
内視鏡所見: 隆起、褪色、多発浅潰瘍、肥厚趨襞、粘膜下腫瘍様など極めて多彩な形態(極めて非特異的)を呈するため、必ず複数箇所からの組織生検が必要である。
特徴切病理像: 腫瘍性に増殖した centrocyt-like B細胞が、腺管上皮(gastric glands)に侵入して上皮構造を破壊する Lymphoepithelial lesion (LEL) が極めて特徴的であり、診断のゴールドスタンダードである。
③ 治療
【表4.1】胃MALTリンパ腫の病期・感染ステータス別治療戦略
| 患者タイプ | 第一選択治療 | 期待される治療効果・予後 |
|---|---|---|
| H. pylori 陽性例 | H. pylori 除菌療法(抗菌薬+酸分泌抑制薬 7日間) | 約80%の症例で除菌のみで完全寛解(腫瘍の消退)が得られる。 |
| 除菌無効例 / HP陰性例(局所病変:Stage I) | 放射線療法(胃局所への低線量照射 30 Gy) | 極めて感受性が高く、ほぼ100%に近い完全寛解率が得られる。二次発がんリスクも極めて低い。 |
| 進行期病変 (Stage II〜) | 化学療法(Rituximab単剤、またはCHOP等との併用) | 進行期であっても緩徐な進行であり、予後は比較的良好。 |
●過去問
放射線〇、再発少ない、内視鏡的には平坦隆起・陥凹が多い、組織でLELが特徴、多くが除菌で消退
5. 機能性ディスペプシア(FD)
【関連出題: 10集 問23/9集 問19, 26】
① 疫学・病態
有病率: 有病率は概ね 11〜17% である(30%を超えることはない)。
病態生理: 胃適応性弛緩障害(食事摂取時の胃上部拡張不全)、胃排出遅延、胃酸に対する知覚過敏、十二指腸浸透圧、心理的ストレス、および感染性胃腸炎からの回復後にディスペプシア症状が遷延する「感染後FD(post-infectious FD)」など、多因子が関与する。
② 診断
Rome IV 基準:
食事摂取時の食後膨満感(Postprandial fullness)
少しの食事で満腹になる早期満腹感(Early satiation)
みぞおちが痛む心窩部痛(Epigastric pain)
みぞおちが熱くなる心窩部灼熱感(Epigastric burning)
除外診断: 内視鏡等で胃癌、胃潰瘍、逆流性食道炎などの器質的疾患を除外する。また、ピロリ感染陽性でディスペプシア症状がある場合は「H. pylori関連ディスペプシア」と呼び、除菌後に症状が改善しない場合のみ真のFDと診断する。
【表5.1】FDの2大臨床分類と治療戦略
| 分類型 | 主症状 | 主な病態メカニズム | 第一選択薬と作用機序 |
|---|---|---|---|
| 食後愁訴症候群(PDS: Postprandial Distress Syndrome) | 食後膨満感、早期満腹感 | 胃適応性弛緩障害、胃排出遅延 | アコチアミド(AChE阻害薬):シナプス間隙のアセチルコリン分解を抑制・増加させ、胃運動(拡張と排出)を強力に改善する。 |
| 心窩部痛症候群(EPS: Epigastric Pain Syndrome) | 心窩部痛、心窩部灼熱感 | 内臓知覚過敏、胃酸過多 | 酸分泌抑制薬 (PPI / P-CAB)、またはアコチアミド |
6. H. pylori感染症(慢性活動性胃炎)
【関連出題: 10集 問45, 50/9集 問4, 5, 16, 20, 21, 25, 28】
① 疫学・病態
感染経路: 主に乳幼児期の生水(井戸水など)摂取や親からの経口感染。
病態進行: 感染により胃粘膜に活動性胃炎(好中球・単核球浸潤)が持続し、加齢に伴い幽門前庭部から胃体部へと慢性萎縮性胃炎が進行する。胃粘膜の腸上皮化生を経て、胃癌、消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)、胃MALTリンパ腫、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)などの原因となる。
② 診断
各種診断法の特徴と、専門医試験で最も狙われる「阻害要因」を整理する。
【表6.1】ピロリ菌感染・除菌判定診断の各検査特徴と注意点
| 検査カテゴリー | 具体的な検査法 | 除菌判定における評価・特徴 | 偽陰性・阻害要因と注意点 |
|---|---|---|---|
| 生検を必要とする検査(侵襲的) | 迅速ウレアーゼ試験 (RUT) | 簡便。除菌前診断に適する。 | 除菌直後は菌量が少なく偽陰性になりやすいため、早期除菌判定には不向き。 |
| 組織鏡検法 | 組織学的評価(Giemsa染色など)を伴う。 | PAS染色ではない(ギムザ染色やWarthin-Starry銀染色を用いる)。 | |
| 培養法 | 薬剤耐性(クラリスロマイシンなど)の判定が可能。 | 培養技術が必要。coccoid form(球状休眠菌)では増殖せず陰性となる。 | |
| 生検を不要とする検査(非侵襲的 / 推奨) | 尿素呼気試験 (UBT) | 除菌判定のゴールドスタンダード。最も感度・特異度が高い。 | PPIやP-CABの服用はウレアーゼ活性を抑えるため「判定前2〜4週間」は休薬が必須(偽陰性防止)。A型胃炎等の無酸症では、胃内pH上昇でウレアーゼ産生雑菌が繁殖し偽陽性となる(泥沼除菌の罠)。 |
| 便中 H. pylori 抗原測定 | UBTと並んで除菌判定に高推奨。 | PPI内服の影響を受けにくい(死菌抗原も検出するため)。 | |
| 血清・尿中抗体測定 | 過去の感染スクリーニング用。 | 除菌成功後も数ヶ月〜1年以上抗体価が高値維持されるため、早期(除菌後4週など)の除菌判定には絶対に使用できない。 |
●過去問
除菌後の判定に行うのは?
〇便中抗原、尿素呼気試験
×迅速ウレアーゼ(偽陰性が多い)、抗体(しばらく陽性が続く)
胃癌発生にCagAが関与する。
再感染は1%程度
除菌するとリスクが1/3程度となる。
③ 治療
除菌療法は、ボノプラザン(P-CAB)の登場により飛躍的に除菌率が向上した。
1次除菌レジメン(7日間内服)
酸分泌抑制薬: ボノプラザン (Vonoprazan: P-CAB) 20mg 1回2回
抗菌薬1: アモキシシリン (AMPC) 750mg 1回2回
抗菌薬2: クラリスロマイシン (CAM) 200mg (または400mg) 1回2回
1次除菌率: ボノプラザンベース of 3剤併用療法は、CAM耐性ピロリ菌に対しても高い除菌力を示し、全体で約92.6%という極めて高い除菌率を誇る(従来のランソプラゾール群の75.9%に対して著明な優越性)。
2次除菌レジメン(1次除菌失敗例に対する7日間内服)
クラリスロマイシン耐性による1次除菌失敗に対し、CAMをメトロニダゾール に変更する。
ボノプラザン 20mg + アモキシシリン 750mg + メトロニダゾール 250mg (1日2回、7日間)
2次除菌率は95%以上と極めて高い。
7. 胃の解剖・生理・消化管ホルモン
【関連出題: 10集 問7, 14/9集 問18, 19, 24, 25, 33, 68】
① 胃の解剖学(支配血管系)
専門医試験において、胃周辺の解剖(動脈系・静脈系)の分岐元と合流先を問う解剖問題は頻出の得点源です。
動脈系(分岐パターン)
左胃動脈(LGA): 腹腔動脈 から直接分岐。
右胃動脈(RGA): 固有肝動脈(または総肝動脈)から分岐。
右胃大網動脈(RGEA): 胃十二指腸動脈 から分岐。
左胃大網動脈(LGEA)、短胃動脈(SGA)、後胃動脈(PGA): すべて 脾動脈 から分岐。
静脈系(合流パターン)

参考 https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/946
右胃大網静脈(RGEV): 前上十二指腸静脈と合流後、胃結腸静脈幹(Henleの静脈幹) を形成し、上腸間膜静脈(SMV) に注いでから門脈(PV)へ入る。
左胃静脈(LCV / 胃冠状静脈): 通常、門脈(または脾静脈)に直接合流する。門脈圧亢進症において側副血行路となり、食道静脈瘤(EV)の主要な供血路となる。
【表7.1】胃を栄養する主要動脈・静脈とその分岐・合流先一覧
② 胃の主要な分泌細胞と生理活性物質
胃底腺および幽門腺に分布する各細胞は、特異的な分泌物を産生し、相互に作用しながら胃酸分泌調節や消化、栄養吸収を担っています。
【表7.2】胃の主要分泌細胞・分泌物と生理作用

| 分泌細胞 | 主な分布領域 | 分泌物質 | 主な生理作用、および関連疾患 |
|---|---|---|---|
| 壁細胞(Parietal cell) | 胃体部・胃底部(胃底腺) | 塩酸 (HCl)、内因子 (Intrinsic factor) | ・胃酸による胃内強酸性化(殺菌、ペプシノーゲン活性化)。・内因子はビタミンB12の吸収(回腸末端)に必須。・A型胃炎では自己免疫(抗壁細胞抗体、抗内因子抗体)の標的となり、破壊されて無酸症・悪性貧血を来す。 |
| 主細胞(Chief cell) | 胃体部・胃底部(胃底腺) | ペプシノーゲン(I および II) | ・強酸性下(低pH)で自己触媒的にペプシン(活性型)に変換され、タンパク質を分解する(脂肪や炭水化物ではない)。・胃体部萎縮により血清PG I値およびPG I/II比が著明低下する。 |
| 副細胞(Mucous neck cell) | 胃体部・胃底部(胃底腺) | 粘液、ペプシノーゲン | ・可溶性粘液を分泌し、胃酸やペプシンといった攻撃因子から胃粘膜を保護する。 |
| G 細胞 | 幽門前庭部(幽門腺) | ガストリン | ・壁細胞からの胃酸分泌を強力に促進する。・ECL細胞を刺激しヒスタミン放出を促すとともに、増殖(過形成)を引き起こす。・A型胃炎の無酸状態によるネガティブフィードバックで過剰分泌(高ガストリン血症)され、多発胃NET(1型)の発生母地となる。 |
| D 細胞 | 胃体部・前庭部 | ソマトスタチン | ・ガストリン、セクレチン、インスリン、グルカゴン等の分泌を強力に抑制し、胃酸分泌を抑制する(強力な酸分泌ブレーキ機構)。 |
| ECL 細胞(Enterochromaffin-like) | 胃体部・胃底部 | ヒスタミン | ・ガストリン刺激を受け、隣接する壁細胞のH₂受容体を介して胃酸分泌を強力に刺激する。 |
③ 胃における栄養素の消化・吸収生理学
胃は機械的・化学的消化の主座であるだけでなく、特定の栄養素の直接吸収、および小腸(十二指腸・空腸・回腸)での吸収を助ける重要な前処理を担っています。
エタノール(アルコール)の直接吸収
胃で直接吸収される代表的物質。摂取されたアルコールの約20%が胃で緩徐に吸収され、残りの80%は小腸で急速に吸収される。胃の排出時間が速い場合や胃切除後では、小腸への移行が速まるため血中アルコール濃度の上昇が急峻になる。
鉄(Fe)の還元・可溶化
主に十二指腸および空腸上部から吸収される。食事中の3価鉄(Fe³⁺)は胃酸によって2価鉄(Fe²⁺)に還元されて可溶化し、小腸上部から吸収されやすくなる。胃切除後や無酸症(A型胃炎など)では鉄の吸収障害が起こり、鉄欠乏性貧血を来す。
ビタミンB12(コバラミン)の吸収プロセス
食事中のビタミンB12は胃内で胃酸・ペプシンによりタンパク質から遊離し、唾液由来のハプトコリン(Rタンパク)と結合。十二指腸で膵酵素により遊離し、壁細胞から分泌された「内因子」と結合して複合体を形成。これが回腸末端の特異的受容体に結合して吸収される。胃全摘後やA型胃炎では内因子の欠乏によりビタミンB12吸収障害が生じ、悪性貧血を来す。
④ 消化管ホルモンの全体像(胃に関連するもの)
試験で頻出される消化管ホルモン(モチリン、セクレチン、コレシストキニンなど)と、胃との機能的な関連性を整理します。
【表7.3】胃の動態・分泌に影響を与える主要消化管ホルモン一覧

| ホルモン名 | 分泌細胞と主な分布領域 | 胃への作用・影響 | 主な生理作用・トリガー |
|---|---|---|---|
| ガストリン | G細胞(幽門前庭部) | 胃酸分泌促進、ECL細胞増殖 | 胃内pH上昇、ペプチドやアミノ酸、胃前庭部伸展などにより分泌促進。 |
| ソマトスタチン | D細胞(胃体部・前庭部など) | 胃酸分泌抑制、ガストリン分泌抑制 | 酸による胃内pH低下により分泌刺激を受け、ガストリン分泌や酸分泌をネガティブフィードバック抑制する。 |
| モチリン | Mo細胞(十二指腸・空腸) | 空腹期強収縮 (MMC) 誘発 | 空腹時に1.5〜2時間間隔で分泌がピークを迎え、胃から小腸全体の強力な伝播性収縮(MMC)を起こし、残渣を胃外へ排出する(アコチアミドなどの胃機能運動改善薬と関連)。 |
| セクレチン | S細胞(十二指腸) | 胃酸分泌抑制、ガストリン分泌抑制 | 酸性の胃内容物が十二指腸に流入することで分泌。膵管からの炭酸水素イオン (HCO₃⁻) 分泌を促進し十二指腸内を中和。 |
| コレシストキニン(CCK) | I細胞(十二指腸・空腸) | 胃排出能抑制(遅延) | 十二指腸内への脂肪酸、アミノ酸の流入により分泌。胆嚢収縮、Oddi括約筋弛緩、膵酵素分泌を強力に促進。 |
●過去問
※アコチアミド 消化管蠕動促進薬
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(アセチルコリン↑ 腸管蠕動亢進)
機能性ディスペプシアに良い適応。
※Pcab
PPIはCYP2C19に影響するが Pcabは影響しない
GERDにおいてPcab20 mg 4wはランソプラゾール30 mg 8w に比べ同等以上
※ペプシノーゲン
主細胞で産生される
胃酸でペプシンとなり蛋白の消化を行う
PGⅠは胃底腺領域の主細胞が産生する。
ピロリ陽性だとPGⅠ↓
まとめ
胃領域は、胃癌のESD適応と薬物療法、自己免疫性胃炎、胃GIST、胃MALTリンパ腫、機能性ディスペプシア、H. pylori感染症、胃の解剖・生理が頻出です。表を使って、疾患ごとの診断基準・鑑別・治療選択を整理しましょう。
コツコツDr.Gと一緒に、1テーマずつ積み上げていきましょう。

