【2026年・無料公開】消化器病学会専門医試験対策まとめ ➂腸

2026年 消化器病学会専門医試験対策まとめ ➂腸 消化器病専門医試験

第9集・第10集の大腸関連問題を、出題頻度が高い順に整理しました。細かな投与量や一般的な定義は省き、選択肢を切るために必要な知識だけを残しています。

最初に覚える5点

  1. 最頻出は、大腸癌・遺伝性腫瘍・ポリポーシス。
  2. Lynch症候群は「右側・若年・多発癌・子宮内膜癌・MSI-H/dMMR」。
  3. CSPは「10 mm未満・非有茎性・腺腫」。癌疑いには行わない。
  4. ステロイド抵抗性の重症UCでは、即効性のあるレスキュー治療を選ぶ。
  5. IBS、腸管嚢胞状気腫症、直腸粘膜脱症候群は、特徴を1〜2個で判別する。

出題マップ

テーマ 関連問題
ポリープ・ポリポーシス 9集 問41, 45, 46/10集 問15, 18, 20, 21
大腸癌・遺伝子・薬物療法 9集 問34, 37, 39, 43/10集 問19, 24, 25, 26
IBD 9集 問36, 45/10集 問16, 28, 29
IBS・その他 9集 問38, 42/10集 問17, 22, 30
感染性腸炎 9集 問35, 44

1. 遺伝性大腸癌・ポリポーシス

疾患 遺伝子・遺伝形式 試験で問われる特徴
FAP APC、常染色体優性 多数の大腸腺腫。胃底腺ポリープ、十二指腸腺腫・乳頭部癌、デスモイドを合併
Lynch症候群 MLH1、MSH2、MSH6、PMS2など、常染色体優性 若年発症、右側結腸、多発・重複癌、子宮内膜癌など。MSI-H/dMMR
Peutz–Jeghers症候群 STK11、常染色体優性 過誤腫性ポリープ、口唇・指趾の色素沈着、小腸重積
若年性ポリポーシス SMAD4、BMPR1A、常染色体優性 若年性ポリープ。大腸・胃癌リスク
Cowden症候群 PTEN、常染色体優性 消化管過誤腫、食道白色扁平隆起、乳癌・甲状腺癌・子宮内膜癌
Cronkhite–Canada症候群 非遺伝性 消化管ポリポーシス、脱毛、爪萎縮、色素沈着、低蛋白血症。治療はステロイドと栄養療法

Lynch症候群の注意点

  • Lynch症候群は「非ポリポーシス型」であり、FAPとは別の疾患。
  • MSI-HだからLynch症候群とは限らない。散発性大腸癌でもMSI-Hを示す。
  • 第9集では「右側結腸」「常染色体優性」「MSI陽性」が繰り返し問われている。

2. 大腸ポリープ

Cold snare polypectomy(CSP)

  • 適応:10 mm未満の非有茎性病変で、術前に腺腫と判断したもの。
  • 5 mm以下は推奨、6〜9 mmは許容。
  • 癌疑い、陥凹型、10 mm以上、有茎性病変には原則選ばない。
  • EMRより不完全切除が増えることがある一方、熱損傷による偶発症は少ない。

SSLとSPS

  • SSLは右側結腸に多く、BRAF変異・CIMPと関連する。
  • 過形成性ポリープとの内視鏡的な鑑別が難しい。
  • Serrated polyposis syndrome(SPS)は、次のいずれかを満たす。
    • 直腸より口側に5個以上の鋸歯状病変があり、すべて5 mm以上かつ2個以上が10 mm以上。
    • 全大腸に20個を超える鋸歯状病変があり、そのうち5個以上が直腸より口側。

3. 大腸癌

早期大腸癌:内視鏡切除後に追加腸切除を考える所見

内視鏡切除したpT1癌では、次のいずれかがあればリンパ節郭清を伴う追加腸切除を検討する。

  • 垂直断端陽性:追加外科切除を強く推奨。
  • SM浸潤度1,000 μm以上。
  • 脈管侵襲陽性。
  • 低分化腺癌、印環細胞癌、粘液癌。
  • 簇出(budding)BD2/3。

SM浸潤1,000 μm以上だけで機械的に決めず、年齢、併存疾患、その他の病理因子を含めて判断する。

大腸がん検診

  • 40歳以上を対象に、免疫便潜血検査2日法を年1回行う。
  • 2回のうち1回でも陽性なら要精検。
  • 要精検率は30〜40%ではなく、問題集では5〜7%程度。
  • 右側大腸癌は左側大腸癌より便潜血検査の感度が低い。

治療選択に関係するバイオマーカー

  • 切除不能進行・再発大腸癌では、RAS、BRAF V600E、MSI/MMRなどが治療選択に関係する。
  • 第10集の選択肢では、治療選択に影響する遺伝子異常のうちKRAS変異が最も高頻度。
  • MSI-H/dMMRでは免疫チェックポイント阻害薬が治療選択肢となる。第10集ではpembrolizumab、nivolumab、ipilimumabが問われた。2026年版ガイドラインでは一次治療にnivolumab+ipilimumabが追記されている。

進行大腸癌の治療方針

  • 切除可能な結腸癌:リンパ節郭清を伴う腸切除が基本。
  • 直腸癌:深達度、リンパ節、肛門からの距離、周囲臓器との関係を評価し、手術・術前治療を組み合わせる。
  • 切除不能進行・再発例:全身薬物療法が中心。原発巣に出血、狭窄、穿孔がなければ、原発巣切除を一律には行わない。
  • 肝・肺転移でも、完全切除可能なら外科切除を検討する。

薬剤と代表的副作用

薬剤 代表的副作用・注意点
irinotecan 下痢、好中球減少
oxaliplatin 末梢神経障害
抗EGFR抗体 皮膚障害、低Mg血症
抗VEGF抗体 高血圧、血栓塞栓、出血、創傷治癒遅延、消化管穿孔

leucovorinと消化管穿孔の組み合わせは誤り。

まれな腫瘍

  • 直腸NET:8 mm程度の小型病変では、まず局所切除を選ぶ。
  • 大腸MALTリンパ腫:病変が限局し無症状なら、慎重な経過観察が選択肢となることがある。

4. 炎症性腸疾患

UCとCrohn病の最小比較

項目 潰瘍性大腸炎(UC) Crohn病(CD)
分布 直腸から口側へ連続 口腔から肛門まで非連続
炎症の深さ 主に粘膜 全層性
内視鏡 びまん性発赤、血管透見消失、易出血、潰瘍 縦走潰瘍、敷石像、アフタ
病理 陰窩炎・陰窩膿瘍、腺管配列異常 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫
合併症 中毒性巨大結腸症、癌、PSC 狭窄、瘻孔、膿瘍、痔瘻

UCは5-ASAを基本とし、活動性が高ければステロイドや分子標的薬を使う。CDでは栄養療法、ステロイドによる寛解導入、生物学的製剤などを病型に応じて選ぶ。ステロイドは両疾患とも寛解維持には使用しない。

UCで手術を急ぐ状況

  • 穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症。
  • 強力な内科治療に反応しない重症・劇症例。
  • 大腸癌またはhigh-grade dysplasia。
  • 難治性で著しくQOLが低下している場合。

治療薬の副作用

薬剤 試験で重要な副作用
mesalazine 間質性腎炎など。骨粗鬆症との組み合わせは誤り
tofacitinib 帯状疱疹、血栓症など
vedolizumab 感染症に注意
tacrolimus 腎機能障害
infliximab 感染症、ループス様症候群など

ステロイド抵抗性の重症UC

  • 第10集問29では、tacrolimusとinfliximabが正答。
  • azathioprineは効果発現が遅いため、急性重症例のレスキュー治療には向かない。
  • 栄養療法はCrohn病では重要だが、UCの寛解導入の主役ではない。
  • 内科治療に反応しない場合は、手術の時機を逃さない。

回腸嚢炎

  • UCに対する大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術後に起こる。
  • 下痢、排便回数増加、腹痛などを認める。
  • metronidazoleまたはciprofloxacinが基本治療。

壊疽性膿皮症

  • UC/CDに合併する、疼痛を伴う進行性皮膚潰瘍。
  • ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などで治療する。
  • 外傷で悪化することがあるため、安易なデブリードマンに注意する。

そのほかの腸管外合併症

  • 結節性紅斑、関節炎、ぶどう膜炎・虹彩炎はUC/CDのいずれにも合併しうる。
  • 原発性硬化性胆管炎(PSC)はUCとの関連が重要。
  • Crohn病では複雑痔瘻・肛門周囲膿瘍が診断の手掛かりになる。

5. CDI・抗菌薬関連大腸炎

Clostridioides difficile感染症(CDI)

  • 抗菌薬使用、入院、高齢、PPI、腎疾患、IBDなどがリスク因子。
  • 下痢がある患者を対象に検査する。無症候性保菌者を治療しない。
  • GDHは感度が高く、トキシンEIAは特異度が高い。結果が不一致ならNAATを組み合わせる。
  • 内視鏡の典型像は黄白色の偽膜。ただし、偽膜がないCDIもある。
  • 原因抗菌薬を可能なら中止し、重症度と再発リスクに応じてmetronidazole、vancomycin、fidaxomicinを選ぶ。重症例ではvancomycin、再発高リスク・再発例ではfidaxomicinが重要。
  • 接触予防策と石けん・流水による手洗いを行う。アルコールのみでは芽胞対策として不十分。

抗菌薬起因性出血性大腸炎

  • ペニシリン系などの投与後、突然の腹痛と血性下痢で発症する。
  • Klebsiella oxytocaが関与することがある。
  • 原因薬を中止し、補液などの支持療法を行う。通常は短期間で改善する。

6. 虫垂炎・憩室症・虚血性腸炎

急性虫垂炎

  • 典型例は心窩部・臍周囲痛から右下腹部痛へ移動する。
  • 診断には造影CTが有用。虫垂腫大、壁肥厚、周囲脂肪織濃度上昇などを確認する。
  • 糞石、膿瘍、穿孔、汎発性腹膜炎の有無で治療方針が変わる。
  • 虫垂切除が基本だが、限局した膿瘍では抗菌薬やドレナージ後の待機手術を検討することがある。

大腸憩室出血

  • 突然の無痛性血便が典型。
  • 造影CTで活動性出血を評価し、下部内視鏡で責任憩室を検索する。
  • 活動性出血、露出血管、付着血栓などを認めれば内視鏡的止血を行う。
  • 内視鏡で制御できなければ、IVRや手術を検討する。

大腸憩室炎

  • 発熱、限局性腹痛、炎症反応上昇。日本では右側結腸にも多い。
  • 単純性では保存的治療が中心。
  • 膿瘍、穿孔、瘻孔、狭窄は複雑性憩室炎。膿瘍ドレナージや手術を検討する。

虚血性腸炎

  • 突然の左下腹部痛に続く血便が典型。下行結腸・S状結腸に多い。
  • 多くは一過性型で、腸管安静と補液により改善する。
  • 腹膜刺激徴候、持続する発熱・炎症、造影不良、腸管壊死を疑う場合は緊急手術を検討する。

結腸軸捻転

  • S状結腸軸捻転:高齢者・慢性便秘に多く、coffee bean sign。壊死・穿孔がなければ内視鏡的整復を行う。
  • 盲腸軸捻転:内視鏡的整復の成功率が低く、手術が基本。

7. IBS・特殊な大腸疾患

過敏性腸症候群(IBS)

  • 男性より女性に多い。
  • Rome IV:反復する腹痛が直近3か月、平均週1日以上。排便との関連、便回数の変化、便形状の変化のうち2項目以上を伴う。
  • 症状は診断の6か月以上前から出現していることが必要。
  • 感染性腸炎後IBSは、感染性腸炎後の約10%に発症する。

腸管嚢胞状気腫症

  • 腸管壁内にガス嚢胞を形成し、右側結腸に多い。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬、ステロイド・免疫抑制薬、呼吸器疾患などが誘因になりうる。
  • 門脈ガス血症は重症を示唆する。

直腸粘膜脱症候群

  • 慢性的ないきみが重要な原因。
  • 下部直腸前壁に好発し、潰瘍型・隆起型などをとる。
  • 病理は粘膜固有層のfibromuscular obliteration。
  • 排便習慣の改善と、いきみを避けることが基本。

8. 感染性腸炎

病原体 試験で押さえる点
Campylobacter 加熱不十分な鶏肉、潜伏2〜7日、回盲部病変、Guillain–Barré症候群
Salmonella 鶏卵・食肉など。マクロライドを常に第一選択とはしない
Yersinia 豚肉、終末回腸炎・腸間膜リンパ節炎、虫垂炎様症状
腸炎ビブリオ 魚介類、比較的短い潜伏期間、水様性下痢・腹痛
黄色ブドウ球菌食中毒 産生済み毒素による。潜伏1〜6時間で嘔吐が目立つ

まとめ

大腸分野は、まず「遺伝性腫瘍・ポリポーシス」「CSP・SSL」「早期癌の追加切除基準」「大腸癌の検診とバイオマーカー」を固めます。次にUC/CD、CDI、回腸嚢炎、IBD薬の副作用を確認します。虫垂炎・憩室症・虚血性腸炎は診断と緊急治療の分岐を、IBS・特殊疾患・感染性腸炎は判別点を覚えます。

本記事は医師の試験対策を目的とした要約です。実臨床では最新のガイドライン、添付文書、施設方針を確認してください。

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