忙しい診療の合間に進めるJ-OSLER。症例登録と病歴要約を、どこから手をつければよいか迷いますよね。
私も消化器内科医として働きながら取り組みました。その経験からおすすめしたいのは、病歴要約に使う症例の見通しを先に立て、症例登録は不足する疾患群から埋めることです。
ロングサマリーは、外部評価を見据えて丁寧に。
ショートサマリーは、必要な情報を正確・簡潔に。
まず確認:J-OSLERの主な修了要件
症例登録を「ショートサマリー」、病歴要約を「ロングサマリー」と呼んで説明します。必要な症例数は専門研修を開始した年度で異なります。
| 専門研修の開始年度 | 症例登録 | 疾患群 | 病歴要約 |
|---|---|---|---|
| 2024年度以降 | 120例以上 | 56以上 | 29編 |
| 2018〜2023年度 | 160例以上 | 56以上 | 29編 |
29編には剖検1編・外科紹介2編を含みます。初期研修症例は、2024年度以降の開始者で症例登録60例・病歴要約14編まで。2018〜2023年度の開始者は症例登録80例まで、病歴要約は同じく14編までです。
領域ごとの症例数・疾患群などの条件もあります。上の数だけで修了できるわけではないため、研修期間や講習等を含む要件は所属プログラムで確認しましょう。
病歴要約を進める3つのコツ
まずは29編の候補を整理します。病歴要約の作成には元の症例登録の承認が必要なので、候補の整理と登録は並行して進めましょう。病歴要約は原則すべて異なる疾患群から選びます(外科紹介・剖検は重複可)。
① 剖検・外科紹介症例を早めに意識する
剖検症例を経験できる機会は、勤務先や担当患者さんの状況に左右されます。専攻医になった早い段階で、指導医に相談しておくのがおすすめです。
名前が記載されていればよいわけではありません。診療への関与に加え、死亡診断・剖検依頼への関与や立ち会いなど、公式手引きの条件を指導医と確認しましょう。外科紹介2編の候補も早めに整理しておくと安心です。
② 専門外の領域を、専門研修開始後の症例で探す
個人的には、これが一番大事なポイントです。消化器内科にいると消化器の症例は集まりますが、他領域は意識しないと不足しがちです。
私は、自分の科で担当した患者さんの合併症や治療関連有害事象にも目を向けました。実際に使った例はこちらです。
| 領域 | 私が経験した例 |
|---|---|
| 神経 | 膵癌患者さんのトルーソー症候群 |
| 感染症 | EBウイルス感染に伴う急性肝炎 |
| 内分泌 | 肝癌患者さんのirAE(免疫関連有害事象)による副腎不全 |
ただし、合併症があるだけで自由に分類できるわけではありません。実際に主担当医として診療し、その領域にふさわしい内容を記載できることが前提です。主病名・疾患群の選択は指導医と確認しましょう。
③ 足りない領域を初期研修症例で補う
初期研修症例を使える病歴要約は最大14編。私は、専門研修開始後の症例で埋まる領域を確認し、不足分を初期研修症例で補う方法が効率的だと思います。
初期研修症例にも、当時の内科指導医による指導や、所属プログラムが専門研修相当と認めることなどの条件があります。候補の洗い出しは早めにしておきましょう。
症例登録を進める2つのコツ
④ 症例数より、まず必要な疾患群を満たす
120例を登録しても、疾患群が足りなければ要件を満たせません。J-OSLERのモニタリング画面で、56疾患群以上と各領域の要件を確認し、不足している群から登録しましょう。
以下は消化器領域の疾患群の例です。左端の大きな番号が疾患群で、個々の病名を1つずつ別の疾患群として数えるわけではありません。
出典:日本内科学会「研修手帳(疾患群項目表)」消化器領域の抜粋。最新の分類・要件は公式資料とJ-OSLERで確認してください。
⑤ 要件を満たした後は、得意分野の症例で着実に
必要な疾患群や領域別の要件を満たしたら、残りは普段から診療している、まとめやすい症例を活用します。
私の場合は、ESDやERCPを行った症例を中心に登録を進めました。ただ、当時はJ-OSLER-Gへ症例を転用できることを知らず、両方を終えた今は「もっと症例の選び方を工夫しておけばよかった」と感じています。
そのため、消化器内科専攻医の方には、ESDの症例ばかりで残りの登録を埋める方法はおすすめしません。J-OSLER-Gで不足する疾患も意識して、後から転用できる症例を幅広く選んでおくと、次の負担を減らせます。
消化器内科専攻医の方はこちらも読んでみてください。
→ 消化器内科専攻医へ|J-OSLER-Gを見据えたJ-OSLER症例登録のコツ
いずれも、実際に主担当医として経験し、登録条件を満たす症例が前提です。なお、内視鏡治療を行っただけでは、病歴要約の「外科紹介症例」にはなりません。
まとめ:力の入れどころを変えよう
ショートサマリーは症例指導医が評価します。一方、ロングサマリーはプログラム内の評価に加え、外部の査読委員による二次評価もあります。
ロングサマリー:質を重視
診断・治療の根拠、考察、文献まで丁寧に。
ショートサマリー:正確さと効率を重視
診療経過と自己省察を簡潔にまとめる。
まず29編の見通しを立て、足りない疾患群を埋め、残りの症例数を積み上げる。この順番を意識するだけでも、取り組みやすくなると思います。
これからJ-OSLERに取り組む専攻医の先生方の参考になれば幸いです。
2026年10月18日確認。症例の集め方は私個人の経験に基づきます。制度の詳細・最新情報は、日本内科学会の「登録と評価」および研修資料をご確認ください。



